塾長便り

特殊(支援)学級を勧められた子どもの実例

投稿日:2015年5月12日 更新日:

「今、学校の担任から特殊(支援)学級に通うよう、勧められてるんです・・・。」

先週の土曜、とある保護者から相談を受けた。

確かに今年から通塾している彼女の娘は小6だが、かけ算や割り算が出来ない上にコミュニケーション能力に問題があると判断され、当塾でも気にかけている生徒の一人であることは間違いない。

20人以上を1人の教員で見なければならない初中等教育の場合、彼女のような子どもに特殊支援学級を勧めてしまうのも先生たちのご苦労を考えれば選択肢の一つ、だとは思う。

しかし内容はどうあれ、特殊学級と言う響きに含まれる「お前は普通じゃないんだ」と言う、言わば烙印を押された子どもたちや保護者は、どう思うのだろう。
本当に彼女は、「特殊」なのだろうか?
そして自分が彼女の親の場合、その事実を受け入れることが出来るのだろうか?

悩んだ末にまず私は塾長として、彼女と話してみることにした。

【決意の一歩】

「2日前、お母さんと話したんだけど学校のこと聞いたよ。あなたはこれから、どうしたい?」

「うちの塾は君たちにお願いして勉強してもらう塾ではないから自分で決めて欲しいんだけど、塾での勉強はもちろん、今までの遅れを本気で取り戻すためには家でも一日に1時間とか2時間、ページにして5ページくらいずつはうちの教材を進めて行く必要があるのね。」

「正直言えば、私たちはあなたが『バカ』だとは思ってないの。勉強に向き合おうとしてこなかっただけ、だと思ってる。だからすぐには無理でも、地道にやれば中学の頃には普通レベルの学力に立ち直れると思ってるの。」

「ただ、本当に気合いを入れてあなた自身がやり直そうと思わない限り、高校受験の時あなたは絶対苦労するだろうし、まわりの先生たちは今回みたいに特殊(支援)学級を勧めて来るかもしれない。でも、それは仕方のないことなのさ。自分が選んでしまう、道だから。」

「でもそれを聞いた上であなたが変わりたい、これから頑張れると約束出来るなら、うちの塾の先生たちは週に一回だけど支援をするし、家で出来るような教材だって必要なモノを提供するけどどうする?冷たいようだけど、やってくれとは思っていないよ。本当に自分で決めて欲しいのさ。」

こう言った、ある意味脅しながらの誘導が、塾長としてふさわしいのかどうかは賛否両論あるだろう。

でも私は、問題を抱える多くの子どもたちはその発信方法こそ違えど、「自分が誰からも理解されていない不安」と戦っていることを知っているし、先進国における教育格差の根本的な原因は勉強のテクニック以前に家族間のバランス、つまりたいていの場合が父権の喪失に因ることも知っている。

だからこそ当塾では、当事者が抱える現状の問題点を克服するきっかけを与えるためにも塾長は遠すぎず近すぎずの父権を示すべきだと考え、典型的な大家族をモデルとしながら塾運営を実践している。
「自ら学ぶココロを育てる」ために、甘やかすだけではダメなのだ。

実際、塾が始まる前のたった5分ほどの話ではあるが、普段あまり意思表示をしない彼女は目に涙をいっぱいに浮かべながら「特殊学級に入りたくない」と言う意思表示と「勉強を、頑張ってみたい」と言う言葉を自ら発し、私と約束をした。
そして教材のページ数にして8ページ、小学2年生からの算数をやり直し始めた彼女は150分ほどの授業時間の中でほぼ全問を正解し、前回までの授業とは比較にならない集中力で授業を終えた。

「やれば出来るじゃないか。がんばってたな。」

まだまだ決意の一歩を踏み出したばかりの彼女ではあるが、学生講師から声をかけられて嬉しそうな笑顔を浮かべた彼女を見る限り、少なくとも算数だけは好きになってくれるのではないかと言う淡い希望を感じた。

そう、希望は行動したからこそ生まれたのだ。

自分の地位なんて、どうでもいい。

行動をこそ、私は示し続けていきたいと思う。

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