ステップアップ塾の開塾から、早いもので10年。
酒乱でDVをふるう父のもと、家庭学習や食事が安心してできない環境下で育った自身の経験から、教育格差の原因が保護者の所得だけにフォーカスされがちな報道姿勢に違和感を覚えてスタートした当塾の無料学習支援事業。早くも10年と言う歳月が経過し、放課後教室を含む無料塾が各地にできた今でも全国からの入塾希望者が増え続けている現状を鑑み、今後は当塾も教室エリアの拡大を目指したいと考え、準備を始めています。
そのためにも十年を一つの節目として捉え、実績と活動への想いを発信する必要があると判断した我々は、トレーラーハウスを設置し西新宿教室を開室している芸能花伝舎の体育館をお借りして28日にシンポジウムを開催しました。
来賓として吉住健一新宿区長・ひやま真一新宿区議会議長にお越しいただき、かつ基調講演とパネリストに各界の著名人をお招きしつつ、活動について改めて「アウトプット」をしたのです。
✅ 活動報告と学生講師リーダーの想い
そもそも当塾を運営するNPO維新隊ユネスコクラブは公金に頼らず、有志の会費や寄付、そして企業の助成金をメインに、細々と活動を続けて来ました。
その理由は、大きく分けて三つあります。
◆公金に頼らない理由、一つ目。
当塾を端的に表せば、「徳育≧(大なりイコール)知育」を目指す、食事と自習室つきの無料塾です。受験にはもちろん対応していますし偏差値上位高への生徒合格実績も多数ありますが、子ども達にとって安心のできる環境づくりを最も大切にしています。
学力向上ばかりを図り偏差値教育に偏ると、勉強はできても人格に問題のある大人が増えてしまうため、当塾では思いやりを行動で示すことのできるボランティアスタッフを基軸にすえ、塾運営を行ってきました。
設立当初、学生講師9人と我々夫婦で始めた学習指導体制も、今や我々の想いに賛同してくれた有名大学や高校の学生が毎年150名以上集まり、彼らの優しさに触れて徐々にやる気と学力を向上させた生徒が毎年、多数生まれています。その事実を考えれば、教育格差と言う、社会課題の解決を目的とした一つの塾形態としてこの運営方針は正しい方法であると確信しています。
またイベント当日、学生講師リーダーのななこ先生が自身の体験を交えながら「自分の居場所として、ステップアップ塾がある」と、スピーチをしてくれました。毎年、たくさんの学生講師のみなさんがそれぞれの言葉とタイミングで「自身の居場所」として当塾を大切にしてくれている旨を表明してくれるのですが、支援対象は違えども支援をする側の学生講師にとっても当塾が居場所になっているならば、この事実こそが、当塾の目指す徳育教育の成果であろうと感じています。
◆公金に頼らない理由、二つ目。
生徒の成長を促すことのできる環境は第一に家庭、次に我々非営利塾を含む教育機関などの外部社会であると私達は考えています。ところが塾を名乗ると営利非営利を問わず、なぜか一部の保護者が塾を子どもの預かり施設と勘違いをしているかのような「お客様マインド」を発動し、自身の子どもに悪影響を及ぼしかねない「わがまま」を言い出すことも少なくありません。
それらの事例は特筆せずとも、しばしば学校問題として騒がれるモンスター・ペアレンツを想像していただければご理解いただけると思いますが、その対処をする場合は特に、税金を頼りにしていないことが強みになることも多いのです。
◆公金に頼らない理由、三つ目。
教育格差の是正は国や行政も積極的に支援策を講じているテーマの一つなので設立時ならいざ知らず、今や我々の実績があれば国や行政の補助金を探したり委託事業を見つけることは容易だと言えるでしょう。
しかし「国や学校機関が解決できないのであれば!」と、いわゆる善意を前提として活動を始めた非営利の教育団体にとって、特に文科省や教育委員会から「お願い」をされるのであればまだ別ですが、「(税金)資金は出してやるぞよ!でも、こっちの言うことは問答無用で聞けよ!」と言うが如くの上から目線での連絡や団体募集要項を見るたび、大人として身につけてしかるべき仁・義・礼・(智)・信における認識の差に違和感を感じてしまうため、現状で目につくレベルの補助金を積極的に取ることはせず、距離をおいて来たのが本音なのです。
そんな想いをオブラートに包みながら、当日は事務局による実績報告に加えて私も「テーマから逸脱し、カドが立ち過ぎないよう」に、発言をさせていただきました。
※徳育:「思いやりやコミュニケーション力の向上を目指す教育」と、当塾では定義しています。
✅ 樺沢紫苑先生による基調講演「勉強で人生は変えられるのか?」
精神科医であり書籍の累計販売数230万冊以上のベストラー作家である樺沢紫苑先生にはこの度、チャリティの一環として本基調講演をお受けいただきました。
70万冊以上の販売実績を誇ると言われる名著「アウトプット大全」のイラストを用いながら、脳における学力向上のメカニズム等をご解説いただきつつ、「勉強で人生を変えるためにも、効率的なアウトプットを身につけることが必要である!そのためにも二週間に三回は、話せ!書け!行動せよ!」とのレクチャーをしていただきましたが、会場を見回すと来場者は終始メモを取りながら、それぞれの立場で「アウトプット」されていました。私も個人的に大変勉強になる講演だった分、来場者が予想より少なかったことはもったいないな、次回はもっと集客を頑張らなければなぁと感じました。
✅ 白熱したシンポジウムと質疑応答
シンポジウムへの登壇者は、基調講演をしてくださった樺沢先生に加えて、(公社)日本ユネスコ協会連盟理事長の鈴木佑司さん、そして(認定NPO)ブリッジフォースマイルの理事長・林恵子さん。加えて、ギガスクール構想を実現した経産省の立役者として有名な浅野大介さんに加えて私の5名がパネリストとして参加し、イベント司会者としておなじみの井下田久幸さんにはファシリテーターとして進行をお願いしました。
ちなみに今回お声かけしたみなさんは、無料学習支援を行う立場の方ではありません。ただし、立場は違ども学びを通じて人生を変えようとしている子ども達に、それぞれのお立場でアプローチしている方々にお声かけさせていただくことでテーマを深掘りする狙いがありました。ただしそこは、さすが各界の著名人。
それぞれの自己紹介を含む経験談が面白いことはもちろん、来場者からの質疑応答への対応も素晴らしく、1時間を予定していたシンポジウムが20分を過ぎてもなお白熱し、質問を途中で切り上げるほどでした。
イベントを振り返れば反省点はもちろんありますが、テーマを含めてかなりレベルの高い教育シンポジウムになったのではないか、と感じました。
最後に、関係者のみなさまにこの場を借りて深く御礼申し上げます。
ありがとうございました。
写真:藤木 美貴子
濱松 敏廣
「子ども時代に感じたDV家庭での不条理を、他の子ども達にまで感じさせたくない。」
そんな想いで、ステップアップ塾を開塾しました。
子ども目線での「有ったらいいな。」を忘れずに、食事つきを前提とした無料学習支援を実施しています。
ヤフーニュースへの寄稿
・「おんぶ」をせがむ小・中学生たち 生育環境で得られなかった「愛」を求めて
・学習塾の自粛で”居場所”失う子たち
・子どもの「スマホ依存」、どう向き合うべきか?取り上げることが「解決」ではない場合も
・“教育格差”是正に向けた1つのヒント 個別指導型オンライン学習のメリデリ
・食べられない子どもたちの現実 “SOS”を見逃さないために大人ができること
誕生日:1976年7月2日
出 身:東京都板橋区
学 歴:明治大学経営学部卒
現 職
・NPO法人維新隊ユネスコクラブ/理事長
・ステップアップ塾/塾長
・株式会社MACH2/代表取締役