私たちの活動の多くは無償が基本のボランティアとはいえ、40人を超える子ども達ひとりひとりに合う教材や物品、資材を用意する手間や経費は年間にするとかなりの時間とお金がかかっています。
私たちの想いに賛同し、支援してくださる方が年々増えてきているとは申しましても、お金はもちろんさまざまなモノが不足している現状では、先日の塾長日誌にも書かせていただいた通り、みなさまからのご支援をいただけるからこそ救われていると言っても過言ではありません。
本日はみなさまからの支援物資がどのような形で使われているか、お礼の気持ちを込めながら2点ほど、ご紹介をさせていただければと思います。
発達障がいと診断されないことで苦しむ、生徒と保護者のために
最初にお断りをいたしますが、当塾は発達障がいを専門に扱う学習塾ではありませんし、保護者の方も専門家がいないことをご了承いただいた上でお申し込みをいただいています。ただ、近年一定数の保護者が当塾の個別指導と理念への望みをかけて、入塾を希望されることが増えているように感じます。
発達障がいの子ども達への当塾のスタンスとしては、
①診断のおりたお子さんには、国が企業への補助を含め、手厚い保護を始めていること(当塾以外の施設の方が、手厚く専門的なケアが低額で受けられる)
②専門家が常駐しておらず、基本的に学生ボランティア講師が指導にあたること
③生徒本人が学力向上を望んでいることが入塾の前提であること etc…
という理由から、申し訳ないのですが、条件が整わない限り入塾はお断りしています。これは、無理やり塾に入れても学力向上は望めず、むしろ子どもが親と過ごす大切な時間を奪ってしまうだけになることは、決してしたくないためです。
今でもその方針に変わりはありません。
しかし今年度から新設した低学年クラスにひとり、発達障がいの診断をされてはいないと聞いていましたが、授業が始まると勉強を10分してから教室をうろつき、別の部屋で個別指導をしようとしても意思を示さず寝転んでしまい、写真のように授業にならないAくんがいました。
話を聞こうと話しかけても彼は言葉が出ず、目すら合わせることが出来ません。(家では塾で勉強をしたい、とお母さんに言っているそうです。)
生徒がやる気を示さない場合、一般的な生徒への基本的な指導方針としては保護者への連絡をした後に帰宅を促すのですが、お母さんから詳しく話を聞いてみると、ある意味上記①の弊害とでも言いましょうか、子どもがいわゆる発達障がいとして認定をされていないグレーゾーンの子どもは保護者や子どもが現実的な苦労をしていても、放課後等デイサービスなどを受けることは(経済的に)難しく、預かってくれるところがない、と言うのです。
※ 逆に、国の制度として療育手帳や精神障害者福祉手帳、受給者証を持っていると預かり費用が実費に対して1割(1000円ほど)の負担で済むなど、優遇制度を利用できるのです。
正直なところ、一般的な学習指導教材しか持たない塾として彼を指導できるのか、相当悩みました。
しかし、毎回可能な限り給食ボランティアをしながらお子さんに付き沿うお母さんの姿とその生徒の未来を考えれば、杓子定規にルールを守るよりも、民間有志の無料塾のあるべき姿として、彼の特性を考えながら特別教材(有償)を使用しながら、彼ともう少しおつきあいをするべきと思えたのです。
その際、以前FB友達のOさんからいただいていた素敵な色鉛筆(水をつけると水彩画のように色が広がるタイプ)が役に立ちました。
この効果は覿(てき)面で、10分机に向かうことすらできなかった彼が、工作の授業の一回目からなんと2時間の授業をこなせるようになり(完成はできなかったので宿題になりました)、他の塾生と給食も食べて帰ることができたのです。
そして前回6/8の授業時には製作時間が短縮され、ほとんどの工程を授業時間内で終わらせるようになり、かつ授業の合間には私を含むスタッフとお話できるまでに成長しました。
※ 作ったお城を持って、得意げな顔をみせるAくん
徐々に工作の時間から勉強の時間へ移行していく計画ではありますが、彼の笑顔を引き出せたのは間違いなく、こういった資材をいただいたからなのです。
Oさん、すごく時間が経ってしまい恐縮ですが、このような形で役立ちました。
ありがとうございました。
※ 6/7、Aくんは発達障がいの診断をされたそうです
ある時気づいた、ノートを書く習慣がつけられない子どもの気持ち
当塾の塾生の多くは一部の子どもを除き、入塾当初は勉強が苦手な子どもが多い状況と言えます。
そしてこれは毎年の悩みでもあるのですが、何度指導をしてもノートに途中式を書こうとせず、初歩的な計算ミスをする子どもが続出します。
「おっちょこちょいで間違えるくらいなら、途中式くらい書けばいいのに・・・」
自分の経験上、面倒くさいからノートを書かないのかと思っていましたが、じっくり子ども達を観察していると、どうやら彼らは手間を惜しむことに加えて共通した想いがあることに気づくようになりました。
つまりそれは、「(そのうち捨ててしまう)ノートに書かなければ、無駄な出費をしないだろう」と言う、子どもなりの計算と判断です。
普段からお母さんの節約の苦労を知っている子ども達は、むしろお母さん達のために、(彼らなりの優しさで)節約の方法としてノートに書かないのではないか、と思うようになりました。
これはあくまで私なりの判断ですが、消耗品費を惜しむよりも「気にせずノートに書け!」と問答無用で必要な子どもにノートを渡す方が、学力向上には役立つと考えています。
と言うわけで地味に消費する写真のノートですが、備忘録を兼ねて記入しているAmazon欲しいものリストを見て支援者の方が、前回同様やはりAmazonから送ってくださりました。この方は匿名で送ってくださり、お礼をお伝えすることもできなかったため、今回のような形でのご報告となりましたことをおゆるしください。
以上2点について、この場を借りて支援者のみなさまに御礼申し上げます。
濱松 敏廣
「子ども時代に感じたDV家庭での不条理を、他の子ども達にまで感じさせたくない。」
そんな想いで、ステップアップ塾を開塾しました。
子ども目線での「有ったらいいな。」を忘れずに、食事つきを前提とした無料学習支援を実施しています。
ヤフーニュースへの寄稿
・「おんぶ」をせがむ小・中学生たち 生育環境で得られなかった「愛」を求めて
・学習塾の自粛で”居場所”失う子たち
・子どもの「スマホ依存」、どう向き合うべきか?取り上げることが「解決」ではない場合も
・“教育格差”是正に向けた1つのヒント 個別指導型オンライン学習のメリデリ
・食べられない子どもたちの現実 “SOS”を見逃さないために大人ができること
誕生日:1976年7月2日
出 身:東京都板橋区
学 歴:明治大学経営学部卒
現 職
・NPO法人維新隊ユネスコクラブ/理事長
・ステップアップ塾/塾長
・株式会社MACH2/代表取締役